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大阪高等裁判所 昭和34年(く)46号 決定 1959年10月08日

少年 B子(昭一五・七・二一生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の要旨は、抗告人の本件の売春防止法違反、贓物収受等は、病床に伏している祖父に一枚のふとんでも作つて上げたかつたり、生れた子供に一つの物でも買つてやりたかつたためである。そのために鑑別所に入つたが祖父や夫の心からの愛情にうたれ、金銭でするだけが孝行でなく、自分が真面目になることこそ一番の孝行だと悟り、帰宅も許され以来一生懸命真面目に暮していたが、その矢先に夫が不注意から窃盗罪で拘置所に入ることになり、淋しさと悲しさの余り又大腸カタルにもなつたため知人に教えられるままに何の注射とも知らずに注射を始めたが、夫が保釈出所して麻薬であることを知らされ、夫の強い忠告と懇願により、その後はやめていたところ、少年係の寺西巡査に右の注射の跡を見つけられ、本件の送致となつたものである。

しかも、もはや注射もやめていることであり、祖父の看病をしながら、本年十一月頃帰宅予定の夫の帰りを待ちたいので、本件抗告に及んだものであると言うのである。

よつて記録を精査し案ずるに、原決定にもあるとおり、本少年の虞犯性は既に中学時代に売春行為として顕われ、その後再三にわたり同種行為やこれに伴う窃盗行為を繰返し、その都度、少年の家庭環境が考慮されて保護処分、不開始、不処分となつているが、改過遷善の跡が見えない。そして今回の犯行虞犯である。少年の保護者は実父母とも幼にして死別又は生別して、後には民生保護を受けている老令の祖父のみで、最近夫婦関係を結んだ内縁の夫○茂○光も目下服役中で、少年を保護指導する能力のない家庭環境である。これらの情況に徴すると原決定の処置は已むを得ないものと思料せられ、本件抗告は理由がない。

よつて少年法第三三条第一項、少年審判規則第五〇条により、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 山本武 裁判官 三木良雄 裁判官 古川実)

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